ポータブル電源の仕様表を見て、W(ワット)とWh(ワットアワー)の違いがわからずに悩んでいませんか。
キャンプや防災の備えとして購入を検討しても、似たような単位が並ぶと、どれが自分の用途に合っているのか判断が難しく感じてしまいます。
しかし、この2つの単位の違いは非常にシンプルです。
Wは「瞬間のパワー」、Whは「使える時間(総量)」を示します。
この電力と電力量の基本的な違いさえ理解すれば、製品選びは驚くほど簡単になります。
この記事では、WとWhの違いを、初心者の方にもわかりやすく例えを交えて徹底的に解説します。
さらに、家電の消費電力や、特に注意が必要な起動電力と、ポータブル電源の定格出力や瞬間最大出力(サージ出力)との重要な関係性も明らかにします。
これにより、バッテリー容量から実際の家電の使用時間を割り出すための具体的な計算方法や求め方も身につきます。
Ah(アンペアアワー)やkWh(キロワットアワー)といった他の単位との比較も含め、あなたの使い方(キャンプ、防災など)に最適なポータブル電源の選び方までを、この記事一本で完全にガイドします。
- W(パワー)とWh(時間)の根本的な違い
- 家電を「動かせるか」を見極めるW(出力)の確認点
- 「何時間使えるか」を計算するWh(容量)の求め方
- 利用シーン別の最適なポータブル電源の選び方
W(ワット)とWh(ワットアワー)の違いとは?基本をわかりやすく解説
- 出力(W)と容量(Wh)の違いを例えで解説
- Wで見る消費電力と起動電力
- 定格出力と瞬間最大出力(サージ出力)
- Whで見るバッテリー使用時間
- 使用時間の計算方法と求め方
- Ah(アンペアアワー)やkWhとの違い
出力(W)と容量(Wh)の違いを例えで解説

ポータブル電源を選ぶ際、最も重要かつ混同しやすいのが「出力(W)」と「容量(Wh)」という2つの数値です。
この2つは、それぞれ「電力」と「電力量」という異なる概念に対応しており、その違いを理解する鍵は「時間」です。
- 「出力」とはW(ワット)のことで、「瞬間のパワー(電力)」を示します。
- 「容量」とはWh(ワットアワー)のことで、「使えるエネルギーの総量(電力量)」を示します。
Wは「今この瞬間にどれだけの仕事をしているか」というパワー(仕事率)であり、Whは「そのパワーで一定時間仕事をした結果、どれだけのエネルギーを消費したか」という総量(電力量)です。
この関係を、日常生活でイメージしやすい「水」と「自動車」で例えてみましょう。
水の例え:出力(W)は「勢い」、容量(Wh)は「総量」
- 出力 (W) = ホースから出る水の「勢い」
出力(W)が高いということは、高圧洗浄機のように勢いよく水が噴射されている状態です。
一方、W数が低いということは、蛇口からポタポタと水が垂れているような穏やかな状態を指します。
家電を動かすためには、それぞれが必要とする勢い(W)を供給する必要があります。 - 容量 (Wh) = 貯水タンクに入っている水の「総量」
容量(Wh)が大きいということは、ダムのように大量の水が蓄えられている状態です。
どれだけ強い勢い(W)で水を使おうとも、タンク(容量)が空になれば水は出ません。
家電をどれだけの時間動かし続けられるか、というエネルギーの総量を示します。
自動車の例え:出力(W)は「馬力」、容量(Wh)は「燃料タンク」
- 出力 (W) = 自動車の「馬力(パワー)」
馬力(出力)が高いスポーツカーは、急な坂道でもグングン登り、素早い加速が可能です。
電子レンジやドライヤーのように大きなパワー(W)を必要とする家電を動かすには、高いWを出力できるパワフルなポータブル電源が必要です。 - 容量 (Wh) = 燃料タンクの「大きさ」
タンク(容量)が大きい大型トラックは、一度の給油で非常に長い距離を走り続けられます。
家電を長時間動かし続けるには、大きなWh(大容量の燃料タンク)を持つポータブル電源が必要になります。
選ぶときの視点:出力(W)と容量(Wh)のバランスが命
ポータブル電源選びで最も重要なのは、この2つのバランスです。
- 出力 (W):
使いたい家電が「動くかどうか」を決めます。 - 容量 (Wh):
その家電を「何時間使えるか」を決めます。
例えば、出力が2000Wあっても容量が100Whでは、電子レンジ(1000W)を動かせても、わずか数分(理論値6分)でバッテリーが切れてしまいます。
逆に、容量が2000Whあっても出力が300Wでは、スマホの充電などは長時間できますが、そもそも電子レンジを起動することすらできません。
自分が使いたい家電は「Wがいくつか」「何時間使いたいか」を明確にすることがスタートラインです。
Wで見る消費電力と起動電力

ポータブル電源の「出力(W)」を考える上で、家電側が必要とする2種類の「W」を知っておく必要があります。
それが「消費電力」と「起動電力」です。この2つを見誤ると「買ったのに動かない」という最悪の事態につながります。
消費電力 (W)
消費電力とは、その家電が通常運転しているときに安定して必要とする電力のことです。
「定格消費電力」とも呼ばれます。製品本体のラベルや取扱説明書に「消費電力 100W」などと記載されている数値がこれにあたります。
ポータブル電源の「定格出力」は、まずこの消費電力を上回っている必要があります。
家電の消費電力は、環境省の省エネ製品買換ナビゲーション「しんきゅうさん」などのサイトでも目安を知ることができます。
起動電力 (W)
起動電力とは、家電の電源を入れた「一瞬だけ」(数ミリ秒〜数秒間)発生する、非常に大きな電力のことです。
「突入電流」とも呼ばれます。
特に、冷蔵庫、エアコン、電動工具、ポンプなど、モーターやコンプレッサーを内蔵する製品は注意が必要です。
これらの機器は、停止している状態から重い部品を動かし始めるために、通常運転時の2倍から7倍以上の電力を要求することがあります。
例えば、通常150Wでゆっくり稼働するポータブル冷蔵庫でも、コンプレッサーを始動させる一瞬だけ、600W以上の電力を要求するケースがあるのです。
「スペック表を見て、消費電力150Wの冷蔵庫だから、定格出力300Wの電源で大丈夫だと思ったのに動かない…」というトラブルのほとんどは、この「起動電力」を見落としていることが原因です。
主な家電の消費電力と起動電力の目安を以下の表にまとめます。
ただし、正確な数値は製品によって大きく異なるため、必ず使用したい家電の取扱説明書を確認するか、メーカーに問い合わせてください。
| 機器名 | 一般的な消費電力(W) | 一般的な起動電力(W)の目安 |
|---|---|---|
| スマートフォン充電 | 15 – 20W | なし |
| ノートパソコン | 50 – 120W | なし |
| 扇風機(モーター) | 30 – 50W | 約50 – 100W |
| 電気毛布(熱) | 50 – 60W | なし |
| ポータブル冷蔵庫(コンプレッサー) | 45 – 80W | 約300 – 600W |
| コーヒーメーカー(熱) | 800 – 1200W | なし(熱製品は起動電力なし) |
| 電気ケトル(熱) | 1000 – 1300W | なし(熱製品は起動電力なし) |
| 電子レンジ(モーター含む) | 700 – 1450W | 約1000 – 2000W |
| 電動ドライバー(モーター) | 400 – 700W | 約700 – 1200W |
※上記はあくまで目安です。正確な起動電力は取扱説明書やメーカーへの問い合わせでご確認ください。
定格出力と瞬間最大出力(サージ出力)

家電側の「消費電力」と「起動電力」に対応するのが、ポータブル電源側の「定格出力」と「瞬間最大出力」です。
この2つの性能が、家電側の要求を満たしている必要があります。
定格出力 (W)
定格出力とは、そのポータブル電源が安全かつ継続的に供給できる電力(W)の上限です。
製品仕様に「1000W」と大きく書かれている数値がこれにあたります。
この数値を超えた電力を使い続けようとすると、安全装置(BMS)が作動して自動的に出力が停止します。
使いたい家電の「消費電力」は、この「定格出力」を下回っている必要があります。
瞬間最大出力 (W)
瞬間最大出力とは、前述のやっかいな「起動電力」に対応するための性能です。
「サージ出力」や「ピーク出力」とも呼ばれます。
これは、電源を入れた直後のごく短時間(数ミリ秒〜数秒間)だけ供給できる最大の電力を指します。
製品仕様には「定格出力1000W / 瞬間最大出力2000W」のように記載されていることが多いです。
この場合、継続して1000Wまで使え、起動時には一瞬だけ2000Wまでのパワー(起動電力)に耐えられる、という意味になります。
ただし、この「瞬間」が具体的に何秒間なのかは製品によって異なるため、注意が必要です。
高価な失敗を避けるための「W」確認ルール
ポータブル電源選びで失敗しないためには、この2つの「W」の比較が絶対不可欠です。
- 使いたい家電の「消費電力」が、電源の「定格出力」を下回っていること。
- 使いたい家電の「起動電力」が、電源の「瞬間最大出力」を下回っていること。
この両方を満たして、初めて家電は正常に動作します。
例えば、消費電力700W、起動電力1500Wの工具を動かしたい場合、「定格1000W / 瞬間1200W」の電源では、定格出力は満たしていても瞬間最大出力が足りないため、起動時に安全装置が作動してしまい使えません。
Whで見るバッテリー使用時間

Wh(ワットアワー)は、ポータブル電源の「燃料タンクの大きさ」、つまりバッテリー容量の真の指標です。
この数値が大きいほど、家電を長時間動かし続けることができます。
例えば、500Whの容量があれば、計算上は50Wの家電を10時間($50W \times 10h = 500Wh$)動かせることになります。
ただし、ここには非常に重要な注意点があります。
それは「電力変換ロス」の存在です。表示されているWhの容量を100%すべて使えるわけではないのです。
ポータブル電源は、バッテリーに蓄えられている直流電力(DC)を、私たちが家庭で使う交流電力(AC)に「インバーター」という機械で変換して出力します。
この変換の過程で、一部のエネルギーが熱として失われてしまいます。
他にも、電源本体の液晶画面を表示したり、USBポートを待機させたりするのにも微弱な電力を消費します。
実使用の目安:「85%ルール」
これらの変換ロスや待機電力を考慮すると、実際に使用できる電力は、表示されているWh容量の約80%〜85%程度とされています。
安全を見て「85%」で計算するのが現実的です。
つまり、500Whのポータブル電源であっても、実際に使えるのは500WhX 0.85 = 425Wh 程度と見積もっておく必要があります。
この「85%ルール」を忘れていると、「計算上は持つはずだったのに!」と、計画よりも早くバッテリーが切れてしまうため注意しましょう。
使用時間の計算方法と求め方
ポータブル電源で家電が何時間使えるかは、簡単な計算式で求められます。
ただし、前述の「85%ルール」を適用した、より現実に近い「実用値」で計算することが非常に重要です。
理論上の使用時間(目安)
まずは基本的な計算方法です。これはあくまで最大値の目安として捉えてください。
使用可能時間 (h) = バッテリー容量 (Wh) ÷ 家電の消費電力 (W)
例:容量500Whの電源で、消費電力50Wの扇風機を使う場合
500Wh÷50W = 10時間
しかし、実際には10時間丸々使えるわけではありません。
実用的な使用時間(変換ロス考慮)
次に、電力変換ロス(安全を見て85%)を考慮に入れた、より正確で実用的な計算方法です。
計画を立てる際は、必ずこちらの式を使いましょう。
【重要】実際の使用時間 (h)≒ (バッテリー容量 (Wh) × 0.85) ÷ 家電の消費電力 (W)
例:容量500Whの電源で、消費電力50Wの扇風機を使う場合
(500WhX0.85)÷50W = 425Wh÷50W = 8.5時間
このように、理論値の10時間とは1.5時間もの差が生まれます。
この差を理解しているかどうかが、キャンプの夜間や災害時に「電源が持つか持たないか」の大きな違いを生むことになります。
応用編:複数の家電を同時に使う場合
複数の家電を同時に使う場合は、家電の消費電力を合計して計算します。
例:50Wの冷蔵庫と10WのLEDランタンを同時に使う場合
合計消費電力は50W + 10W = 60W です。
これを500Whの電源で使うと、実用的な使用時間は、
(500WhX0.85)÷60W ≒7時間 となります。
Ah(アンペアアワー)やkWhとの違い
Whと似た単位に、Ah(アンペアアワー)やmAh(ミリアンペアアワー)、kWh(キロワットアワー)があります。
これらはポータブル電源選びで混乱しやすいポイントですが、違いは明確です。
Ah / mAh との違い
Ah(アンペアアワー)やmAh(ミリアンペアアワー)もバッテリー容量を示す単位ですが、これらは「電圧(V)」に依存する数値です。(1Ah = 1000mAh)
これらは主に、内蔵するリチウムイオン電池の電圧が3.7Vなど、ほぼ共通規格化されているモバイルバッテリーやスマートフォンのバッテリー容量に使われます。
電力量(Wh)とAhの関係は以下の式で表されます。
Wh(電力量) = V(電圧)X Ah(電流容量)
例えば、同じ「10,000mAh (10Ah)」のバッテリーでも、電圧が異なれば総エネルギー量(Wh)は変わってしまいます。
- 電圧3.7Vの場合: 3.7V × 10Ah = 37Wh
- 電圧5Vの場合: 5V × 10Ah = 50Wh
このように、AhやmAhは電圧が異なると正確な容量比較ができません。
ポータブル電源は、AC100V出力やUSB出力など内部で複雑な電圧変換を行っているため、Ah表記は適していません。
そのため、異なるメーカーの製品を公平に比較する場合は、電圧の違いを考慮する必要がない「Wh」で統一して見ることが絶対的なルールです。
kWh との違い
kWh(キロワットアワー)は、Whの単純に1000倍の単位です。(1kWh = 1000Wh)
これは、私たちが毎月電力会社に支払っている電気料金の請求書で使われる単位です。
例えば、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bなどの料金プランでは、「1kWhあたりいくら」という形で料金が設定されています。
ポータブル電源(数百〜数千Wh)よりもはるかに大容量な、家庭用の据え置き型蓄電池(数kWh〜十数kWh)の容量を示す際にも使われます。
意味はWhとまったく同じで、単に桁が大きいために「k(キロ)」が付けられているだけだと覚えておけば問題ありません。
W Wh 違いを理解し最適な選び方を実践
- ポータブル電源の選び方の基本
- キャンプでの必要なW数とWh数
- 防災目的で重視すべきスペック
- W Wh 違いを理解して選ぼう
ポータブル電源の選び方の基本

WとWhの違いを理解したところで、いよいよ実践です。
これまでの知識を総動員し、購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための、最適な一台を選ぶ具体的な3ステップを紹介します。
やることはシンプルで、「自分が使いたい家電」を明確に書き出すことから始まります。
ポータブル電源 失敗しないための選び方 3ステップ
まず、ポータブル電源で「同時に」使いたい家電と、「それぞれを何時間」使いたいかをすべてリストアップします。
例えば、「週末の車中泊」を想定して計算してみましょう。
- ポータブル冷蔵庫(消費電力50W)を10時間
- スマートフォン充電(消費電力15W)を2時間
- LEDランタン(消費電力10W)を5時間
リストアップした家電の「消費電力」と「起動電力」を調べます。
定格出力:同時に使う可能性があるのは冷蔵庫(50W)+スマホ(15W)+ランタン(10W) = 合計75W。
冷蔵庫の起動電力(仮に400W)が最も大きいため、「定格出力500W / 瞬間最大出力500W以上」あれば十分と判断できます。
各家電の「必要な電力量(Wh)」を計算し、合計します。
(家電の消費電力W × 使いたい時間h)÷ 0.85(変換ロス)= 必要なWh容量
- 冷蔵庫: 50W × 10h = 500Wh
- スマホ: 15W × 2h = 30Wh
- ランタン: 10W × 5h = 50Wh
- 合計の必要電力量: 500 + 30 + 50 = 580Wh
- 変換ロスを考慮した必要容量: 580Wh ÷ 0.85 ≈ 682Wh
この場合、「定格出力500W以上」かつ「容量682Wh以上」のモデルが、あなたのニーズに合うポータブル電源となります。
キャンプでの必要なW数とWh数

キャンプや車中泊など、アウトドアシーンで必要な容量(Wh)と出力(W)は、滞在日数や「どこまで快適性を求めるか」によって大きく変わります。
ここでは、代表的な3つの利用シーン別に、必要なスペックの目安を詳しく解説します。
日帰り・ソロキャンプ:デバイス充電がメイン
スペック目安: 容量 300Wh~500Wh / 出力 300W程度
日帰りや身軽なソロキャンプでは、スマートフォンやカメラ、ドローンといったデバイスの充電が主な目的となります。
これらの機器は消費電力(W)が小さいため、ポータブル電源の出力(W)は300W程度あれば十分に足ります。
重要なのは容量(Wh)です。
例えば、スマートフォンのフル充電に必要な容量は約15Wh〜20Whとされています。
容量が300Whあれば、理論上15回以上は充電できる計算になり、カメラやLEDランタンを併用しても余裕があります。
「スマホを何回充電したいか」を基準に容量(Wh)を選ぶと失敗が少ないでしょう。
週末キャンプ・車中泊:快適性の確保
スペック目安: 容量 700Wh~1000Wh / 出力 1000Wクラス
1泊2日程度のキャンプや車中泊で、「快適性」を求め始める場合、スペックの要求が一気に上がります。
主な使用機器として、ポータブル冷蔵庫、電気毛布、扇風機、ノートパソコンなどが視野に入ります。
ここで最重要となるのが「出力(W)」です。
特にポータブル冷蔵庫は、起動時に大きな電力(起動電力)を必要とします。
通常運転時が50W程度でも、起動する一瞬だけ400W〜600Wのパワーを要求することがあります。
そのため、定格出力は500W以上、起動電力(サージ)に対応できる「瞬間最大出力」が1000W程度あるモデルを選ぶと安心です。
容量(Wh)も、冷蔵庫や電気毛布を一晩中動かすことを想定する必要があります。
例えば、消費電力50Wの冷蔵庫を一晩(8時間)動かす場合、(50WX8h)÷0.85(変換ロス≒470Wh の容量が必要です。
これにスマホ充電や他の機器のマージンを加えると、最低でも700Wh以上の容量が推奨ラインとなります。
長期滞在・グランピング:家電の使用
スペック目安: 容量 1500Wh以上 / 出力 1500W以上
長期滞在や、ほぼ「家」と同じ快適性を求めるグランピングでは、高出力な家電の使用が目的となります。
具体的には、電気ケトル、コーヒーメーカー、電子レンジ、小型炊飯器、ヘアドライヤーなどです。
これらに共通するのは、「熱を発生させる家電」であるという点です。
熱器具は、起動電力こそありませんが、通常運転時の消費電力が1000W〜1400Wに達するものがほとんどです。
中途半端なモデルでは絶対に動きません。
したがって、「定格出力が1500W以上」ある大容量・高出力モデルが必須条件となります。
また、容量(Wh)も非常に重要です。例えば、1200Wの電気ケトルを10分間使用するだけで、 (1200W X(10/60)h) ÷0.85≒235Whもの容量を一気に消費します。
これらの家電を複数回使うことを考えると、容量も1500Wh以上、できれば2000Whクラスが必要となり、ソーラーパネルでの充電も併用することが前提となるレベルです。
防災目的で重視すべきスペック

防災・非常時への備えとしてポータブル電源を選ぶ場合、「たまに使う」アウトドアとは異なる、よりシビアな視点が必要になります。
重要なのは、「いざという時に確実に動く」信頼性と、「生命や健康維持」に関わる安全性です。
特に、「冷蔵庫(食料・薬品の保存)」や「医療機器」を動かせるか、そして「バッテリーの安全性と寿命」が最重要項目となります。
停電がどれだけ続くかを想定し、必要な容量と出力を3つのレベルで詳しく解説します。
内閣府の防災情報ページでも、停電時の情報収集手段(スマートフォンなど)の電源確保が重要視されています。
(出典:政府広報オンライン 災害ページ「災害時に命を守る一人一人の防災対策」)
レベル1:短期(1~2日)- 情報確保
スペック目安: 容量 300Wh~700Wh / 出力 300W~500W
これは、停電発生直後の1~2日を乗り切るための「情報確保」を最優先にした構成です。
いわゆる「情報難民」にならないための最低限の備えと言えます。
主な目的は、家族全員分のスマートフォンへの充電、ラジオでの情報収集、そして夜間の明かりを確保するLEDライトの使用です。
これらの機器は消費電力(W)が小さいため、出力(W)は300W~500W程度あれば十分対応可能です。
容量(Wh)は300Wh~700Whの範囲で、家族の人数やスマホの台数に応じて選ぶと良いでしょう。
レベル2:中期(2~3日)- 食料と最低限の生活維持
スペック目安: 容量 1000Wh~2000Wh / 出力 1500W以上
停電が2~3日に及ぶ中期戦を想定した、「食料と最低限の生活維持」を目指すレベルです。
これが、家庭での防災備蓄として最も現実的かつ推奨される構成となります。
このレベルで最重要となるのが「冷蔵庫の稼働」です。食料の腐敗を防ぐだけでなく、持病のある方の薬品(インスリンなど)を守るために不可欠です。
冷蔵庫はコンプレッサーを動かす「起動電力」が大きいため、「定格出力1500W以上」(瞬間最大出力2000Wクラス)の高出力モデルが必須となります。
また、1000Whを超える大容量があれば、電子レンジでの簡単な調理(レトルト食品の加熱)や、冬場の電気毛布・夏場の扇風機による体温維持も可能になり、避難生活の質(QOL)を大きく改善できます。
レベル3:長期 – エネルギーの自立
スペック目安: 容量 2000Wh以上 / 出力 1500W~2000W
これは、大地震や広域災害による1週間以上の長期停電を想定した、「エネルギーの自立」を目指すレベルです。
レベル2で挙げた家電を、長期間にわたって動かし続けることを目的とします。
このレベルでは、ポータブル電源本体の大容量(Wh)もさることながら、「ソーラーパネルとの連携」が必須となります。「日中にソーラーパネルで発電・充電し、その電力で夜間を乗り切る」というサイクルを確立することが目標です。
そのため、電源本体のソーラー入力(MPPT)性能や、パススルー充電(充電しながら給電できる機能)に対応しているかどうかも、非常に重要な選定ポイントになります。
バッテリーの種類:リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)
防災用途では、ポータブル電源の心臓部である「バッテリーの種類」が極めて重要です。
現在、主流のバッテリーは主に2種類あります。
- 三元系リチウムイオンバッテリー:
メリット:エネルギー密度が高く、製品を軽量・小型化しやすい。
デメリット:リン酸鉄系より充放電サイクル寿命が短い(約500〜1000回)。熱暴走のリスクが相対的に高い。 - リン酸鉄リチウムイオン (LiFePO4) バッテリー:
メリット:安全性が非常に高い(熱暴走しにくい)。充放電サイクル寿命が極めて長い(約3000回以上)。
デメリット:三元系より重く、サイズが大きくなる傾向がある。
防災・長期保管には「リン酸鉄リチウムイオン」を強く推奨
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーは、その高い安全性と圧倒的な長寿命が特徴です。
従来のバッテリーの数倍(6倍以上とも)長持ちするため、「満充電にして数年間保管しておき、いざという時に確実に使う」という防災用途に最適です。
また、自己放電(使わなくても自然に電気が減る現象)が少ないことも、長期保管に向いています。
初期費用は三元系より高くなる傾向がありますが、安全性と10年以上使える長期的なコストパフォーマンスを考えれば、防災目的では最適な選択肢と言えます。
W(ワット)とWh(ワットアワー)の違いを理解して選ぼう
W(ワット)とWh(ワットアワー)の違い、そしてポータブル電源の選び方について、基礎知識から実践的な計算方法、利用シーン別の推奨スペックまで詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- W(ワット)は瞬間のパワー(馬力・水の勢い)
- Wh(ワットアワー)はエネルギーの総量(燃料タンク・水の総量)
- Wは「家電を動かせるか」を判断する基準
- Whは「何時間使えるか」を判断する基準
- 家電の「消費電力(W)」と、特にモーター系の「起動電力(W)」を必ず確認する
- 電源の「定格出力(W)」は、家電の消費電力を上回る必要がある
- 電源の「瞬間最大出力(W)」は、家電の起動電力を上回る必要がある
- 使用時間の計算は「Wh ÷ W」が基本だが、ロスを考慮すべき
- 実用的な使用時間は (バッテリー容量Wh × 0.85) ÷ 消費電力W で計算する
- AhやmAh表記は電圧に依存するため、Whに統一して容量を比較する
- kWhは1000Whのことで、電気料金や家庭用蓄電池の単位
- キャンプで熱器具(ケトル等)を使うなら定格出力1500W以上が必須
- 防災用なら冷蔵庫を動かせる「容量1000Wh以上」が推奨ライン
- 長期保管と安全性を重視する防災用途では「リン酸鉄(LiFePO4)」が最適
このW(パワー)とWh(時間)という2つの視点を持つだけで、無数の製品の中から「安物買いの銭失い」を避け、あなたの使い方に本当に必要な一台を自信を持って見つけ出せるようになります。
ぜひ、この記事を参考に、あなたにとって最適なポータブル電源を手に入れてください。
