こんにちは。電源LABO、運営者の「きっちゃん」です。
最近、ポータブル電源の性能がぐんぐん上がっていて、キャンプだけでなく家の中で使っている方も増えましたよね。
私もその一人です。
そんな中で、「これ、もしかして停電対策のUPS(無停電電源装置)の代わりに使えるんじゃない?」と考える方、すごく多いと思います。
特に、大事なデータが入ったPCやNAS(ナス)をお持ちの方は、作業中の急な停電でデータが飛んでしまうリスクを避けたいですよね。
従来のUPSはバックアップ時間が短かったり、数年でバッテリー交換が必要だったり…。
「大容量で長寿命なポータブル電源で、UPSの代わりができたら最高!」と期待するのは当然だと思います。
でも、ポータブル電源のスペック表をよく見ると、「UPS機能とは?」「パススルーとは何が違うの?」「切り替え時間20msって書いてあるけど、PCは大丈夫?」といった新しい疑問がたくさん出てきます。
実際、この「切り替え時間」を間違えて選ぶと、停電時にPCやNASがシャットダウンしてしまい、まったくUPSの代わりとして機能しない…という悲しい事態になりかねません。
私もAnkerやEcoFlow、Jackery、BLUETTIなど各社の製品を調べましたが、本当に奥が深い世界です。
この記事では、ポータブル電源をUPSの代わりとして使いたいと考えている方に向けて、最低限知っておくべき技術的な違いや、0msモデルなどの本当にPCを守れる機種はどれなのか、私の調査結果を分かりやすくまとめます。
- ポータブル電源の「UPS機能」と「パススルー」の根本的な違い
- なぜ「20ms」の切り替え時間ではPCやNASを守れないのか
- 「つなぎっぱなし」運用はバッテリー寿命に影響するのか
- 本当にUPSの代わりになる、おすすめの高速モデルと0msモデル
ポータブル電源のUPSの代わりは可能か?
まず、「ポータブル電源はUPSの代わりになるの?」という一番の疑問にお答えします。
結論から言うと、「一部の高速・高性能モデルなら可能。でも、多くの製品は不完全、あるいはPC用途には危険」というのが私の見解です。
従来のUPSが持っていた「停電対策」と「電力の安定化」という2つの役割のうち、多くのポータブル電源は「停電対策」しか(それも不完全にしか)カバーできていないのが実情なんです。
この「可能」と「危険」を分けるポイントが、専門用語でごちゃごちゃしていて分かりにくいんですよね。
ここでは、特に重要な「UPS機能とパススルーの違い」や、PC保護の境界線となる「17msの壁」、そして見落としがちな「AVR機能」について、私なりに噛み砕いて解説します。
UPS機能とパススルーの違い

ポータブル電源のスペックを見ていると、「パススルー対応」と「UPS機能搭載」という、似ているようで実は全然違う言葉が出てきます。
ここを間違えると、停電時にまったく役立たずになってしまうので、最初にしっかり押さえておきましょう!
パススルー機能とは?
これはシンプルに、「ポータブル電源本体をコンセントで充電しながら、同時にACコンセントやUSBポートから別の機器へ給電できる」機能のことです。
「ながら充電・給電」とも呼ばれますね。
一見便利なんですが、これ「だけ」の機能だと、もし停電が起きたらどうなるでしょう?
答えは、「ポータブル電源への充電が止まり、同時に機器への給電も一瞬(あるいは完全に)止まってしまう」可能性が高いんです。
製品によっては、停電を検知しても自動でバッテリー出力に切り替わらず、手動で電源ボタンを押し直さないと給電が再開しないものすらあります。
これでは、PCやNASのデータは守れませんよね。
パススルー機能は、あくまで「利便性」のための機能であり、「保護」のための機能ではないんです。
UPS機能(付きパススルー)とは?
こちらが本命です。メーカーが「UPS機能搭載」と謳う場合、それは一般的に「UPS機能付きパススルー」のことを指します。
EPS (Emergency Power Supply:緊急電源) と呼ばれることもあります。
これは、パススルー(充電しながら給電)中に停電を検知すると、「瞬時にバッテリーからの電力供給に自動で切り替えてくれる」機能です。
まさに私たちが「UPSの代わり」として期待する機能ですね!
従来のUPSでいうところの「オフライン(スタンバイ)方式」に近い動作を、ポータブル電源で実現したもの、と考えると分かりやすいです。
通常時はコンセントの電力をそのまま機器に流し(バイパス)、停電時だけバッテリーに切り替えるわけです。
機能の違い早わかり
| 機能 | できること | 停電時の動作 | UPSの代わり |
|---|---|---|---|
| パススルー | 充電しながら給電 | 給電が停止する(か、手動切替) | ×(不可) |
| UPS機能 | 充電しながら給電 | 自動でバッテリー給電に切り替わる | △~◎(※要条件確認) |
(※)ただし、この「自動で瞬時に」の「瞬時」がクセモノで、製品によって性能がピンキリです。そのカギを握るのが、次の「17msの壁」なんです。
PCが落ちる「17msの壁」とは

「UPS機能搭載」と書かれたポータブル電源を見つけても、まだ安心はできません。
次にチェックすべき最重要項目が「切り替え時間(スイッチオーバータイム)」です。
これは、停電を検知してからバッテリー給電に切り替わるまでの、ごくわずかな「電力の途切れる時間」のこと。
単位はms(ミリ秒)、つまり1000分の1秒で表されます。
そして、私たちが守りたいデスクトップPCの電源ユニット(PSU)は、内部のコンデンサに電気を蓄えることで、一瞬の電力途絶になら耐えられるように設計されています。
この「耐えられる時間」のことを「ホールドアップタイム(保持時間)」と呼びます。
この保持時間について、長らくPC電源の業界標準であった「ATX規格(ATX 3.0やそれ以前)」では、「最低でも17ms(ミリ秒)は電力供給が途絶えても動作を保持しなさい」というルールが定められてきました。
(出典:Intel ATX 3.0 PSU Design Guide ※英語サイト)
これが、通称「17msの壁」です。
最新規格 ATX 3.1の登場
ちなみに、2025年現在では「ATX 3.1」という新しい規格も出てきています。
この新規格では、保持時間が「100%フル負荷時で12ms」と、一部の条件では短縮されました。
しかし、これは「要求が緩和された」と単純に喜べるものではありません。
というのも、推奨される「80%負荷時では17ms」という基準は依然として残っており、むしろ「12ms」という新しい必須項目が加わったことで、切り替え時間が13msや15msといった中途半端なポータブル電源は、PCがフル稼働しているとシャットダウンするリスクが新たに生まれたとも言えるんです。
したがって、ATX 3.0と3.1の両方の規格に対して安全マージンを持つためには、ポータブル電源の切り替え時間は「10ms未満」であることが唯一の安全な選択肢となります。
20msモデルが「無意味」である理由
ここで、多くのポータブル電源メーカー(Jackery, BLUETTI, UGREENなど)が公称する「20ms」や「20ms以下」というスペックを見てみましょう。
もうお分かりですね?
もしポータブル電源の切り替え時間が「20ms」だった場合…
- 停電発生!
⇩ - PC電源(PSU)は「17msの壁」に基づき、17ms耐えようと頑張る。
⇩ - 17ms後:PC電源、限界が来てシャットダウン。(データが…!)
⇩ - 20ms後:ポータブル電源が「お待たせ!」とバックアップ電力の供給を開始。
…そう。ポータブル電源が助けに来る前に、PCはとっくに力尽きて(電源が落ちて)いるんです。
要注意:20msは「間に合っていない」
切り替え時間「20ms」を謳うポータブル電源を、PCやNASのUPSとして使用することは「技術的に無意味」です。
これは「UPS機能搭載」という言葉から期待される「停電からPCを守る」という目的を、スペックの時点(17ms < 20ms)で達成できていないことを意味します。
この「17msの壁」は、PC・NAS保護を考える上で絶対に外せない判断基準です。
停電以外のリスク「AVR機能」
「じゃあ、切り替え時間が17msより早い(例えば10msの)モデルなら完璧?」と思うかもしれませんが、実は従来のUPSが持っていて、ほとんどのポータブル電源が持っていない「もう一つの重要な機能」があります。
それがAVR(自動電圧調整)機能です。
これは、停電(電圧0V)にはなっていないけど、電圧が不安定になる状態を検知して、自動で100Vに近い安定した電圧に補正してくれる機能です。
デリケートなPCやNASにとって、こういう日常的な電圧のブレも、じわじわとダメージを与える脅威なんですね。
日常に潜む「ブラウンアウト」と「サージ」
電圧の不安定には、主に2種類あります。
- ブラウンアウト(電圧低下):
家庭内でエアコンや電子レンジなど大型家電を使った瞬間、一時的に電圧が100Vより下に(例:80Vや90Vに)落ち込む現象。 - サージ(過電圧):
雷が近くに落ちた時などに、一瞬だけ100Vを大きく超える(例:120V以上)異常な電圧が発生する現象。
従来のPC用UPSの多くは、このAVR機能を標準搭載しており、こうした日常的な電圧のブレを内部の変圧器で吸収し、常に安定した電力をPCに送ってくれていました。
AVR非搭載のリスク
しかし、私が調べた限り、ZendureやEcoFlowの最上位(オンライン式)モデルを除き、ほぼ全てのポータブル電源(オフライン式)は、このAVR機能を搭載していません。
これはつまり、ポータブル電源が「停電だ!」と認識する電圧のライン(例えばAnker Solix C300は70V~150Vとサポート情報にありました)に達するまでは、
不安定で危険な電圧をそのままPCやNASに流し続けてしまう(=垂れ流す)リスクがある、
ということです。
もし家庭の電圧が80Vに落ち込んでも、ポータブル電源は「まだ70Vじゃないから正常」と判断し、その80Vの低電圧をPCに供給し続けます。
これでは、機器を「保護」しているとは言えませんよね。
補足:UPSの代わりは「不完全」
高速な切り替え(10msなど)ができるポータブル電源は、「停電(ブラックアウト)」からはPCを守ってくれます。
しかし、「日常的な電圧の不安定(ブラウンアウトやサージ)」からは守ってくれません。
この点を理解した上で、「停電時のデータロストさえ防げればOK」と割り切って使う必要があります。
もし電力環境が不安定な地域にお住まいなら、AVR機能は必須と考えた方が良いでしょう。
20ms機はPC・NASに使える?

ここまでの話で結論は出ていますが、改めて整理します。
切り替え時間が「20ms」や「20ms以下」と表記されているポータブル電源は、PCやNASのUPSの代わりとして使うことはできません。
(※「17msの壁」により、切り替えが間に合わずシャットダウンするため)
「じゃあ、20ms機はUPS機能として何の意味があるの?」と疑問に思いますよね。
これらは、PCほど厳格な電力保持を必要としない機器、つまり20ms程度の瞬断になら耐えられる機器のバックアップ用としてなら、もちろん役立ちます。
20ms機が適している機器の例
- Wi-Fiルーター、ネットワーク機器(ONUなど):
停電時にWi-Fiが途切れると困る、というニーズには十分応えられます。 - LED照明:
一瞬チカッとするかもしれませんが、完全に消灯してしまうよりはずっと良いです。 - 水槽のポンプやヒーター:
生物の命に関わる機器ですが、PCのPSUほど厳格なミリ秒を要求しない場合が多いです。(ただし、機器によりますので高信頼モデル推奨です) - その他(監視カメラ、一部のOA機器など)
BLUETTI AC180 (20ms) などは、公式でも「OA機器向け」として、PC保護とは一線を画している印象です。
決して「20ms機が悪い」のではなく、「PC・NAS用には適していない」という適材適所の問題ですね。
用途を間違えなければ、安価で大容量なバックアップ電源として非常に優秀です。
つなぎっぱなしとバッテリー寿命

ポータブル電源をUPSの代わりとして使う場合、必然的に「コンセントにつなぎっぱなし」で運用することになります。
これ、バッテリーに悪そう…と心配になりますよね。私も最初はそれが一番気になりました。
これは、搭載されているバッテリーの種類によって答えが変わってきます。
バッテリーの種類による耐性の違い
- 従来のUPS(鉛蓄電池):
これが一番寿命が短く、2~3年でバッテリー交換が必要になるのが当たり前でした。
「つなぎっぱなし」が前提ですが、劣化も早いのが宿命でした。 - 従来のポタ電(三元系NMCバッテリー):
少し前までの主流だったバッテリーです。これは、満充電(100%)の状態で保持され続けると、バッテリーの劣化が早まるという弱点がありました。
UPSのような常時満充電での待機は、実は苦手だったんです。 - 現在の主流(リン酸鉄LFPバッテリー):
最近の高品質なモデル(Anker Solixシリーズなど)のほとんどが、この「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)」バッテリーを採用しています。
LFPバッテリーは、三元系に比べて満充電状態でのストレスに強く、熱安定性も高いのが最大の特徴です。
メーカーが「UPS機能」を搭載し、常時接続を推奨し始めたのは、このLFPバッテリーの普及が大きな理由なんです。
ですから、「LFPバッテリー搭載モデルなら、つなぎっぱなし運用は基本的にOK」というのが現在の答えになります。
ポータブル電源をさらに長持ちさせる設定
「つなぎっぱなしOK」とは言っても、バッテリーの健康を最大化したいですよね。
その場合、アプリで「充電上限」を設定できるモデルがおすすめです。
例えば、Anker Solixシリーズなどの一部のモデルでは、充電量をあえて100%にせず、80%や90%などに制限できます。
リチウムイオン電池は、満充電よりも80%程度で保持する方が負荷が少なく、寿命が延びると言われています。
UPSとして常時接続しつつ、バッテリーへの負荷を最小限に抑える賢い使い方ですね。
バッテリー以外の寿命は?
バッテリーが長寿命(3000サイクル以上)なのは分かりましたが、「つなぎっぱなし」でインバーターや制御基板(BMS)などの電子部品は大丈夫なの?という懸念もありますよね。
これに対して、例えばAnkerは、Solixシリーズの電子部品の寿命も5万時間(約5.7年)の長期設計を採用していると公表しています。
このように、メーカー側も常時使用への耐久性を考慮して設計を進めているようです。
ポータブル電源のBMSについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒ポータブル電源のBMSとは?安全と寿命を左右する仕組み
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)の優位性

「つなぎっぱなし」の話でも出ましたが、なぜ今、各社がこぞって「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)」を採用するのか、その優位性をおさらいします。
ポータブル電源選び、特にUPSの代わりとして「長く」「安全に」使うためには、非常に重要なポイントです。
もはや、UPS用途としてポータブル電源を選ぶなら、LFPバッテリー搭載は必須条件と言ってもいいかもしれません。
圧倒的な長寿命(高サイクル寿命)
これが最大のメリットです。従来の三元系(NMC)バッテリーの充放電サイクル寿命が、多くの場合800回~1000回程度(残容量80%になるまで)だったのに対し、LFPは3000回~4000回以上と、ケタ違いの長寿命を誇ります。
これは、仮に毎日1回充放電を繰り返しても10年近く使える計算になり、従来のUPSが鉛バッテリー交換で2~3年ごとに出費していたことを考えると、驚異的な進化であり、コストパフォーマンスも抜群です。
高い安全性(熱安定性)
LFPは、三元系(NMC)やコバルト系(LCO)のバッテリーと比較して、熱暴走(発火)のリスクが低いという大きな特徴があります。
これはバッテリーの化学構造的な安定性によるものです。
常時コンセントにつなぎ、リビングや書斎など、人がいる室内に設置することが前提となるUPS用途としては、この安全性の高さは非常に大きな安心材料と言えます。
満充電耐性(カレンダー寿命)
先ほども触れましたが、100%の満充電状態で保持されることによる劣化(いわゆるカレンダー寿命)に強い特性を持っています。
三元系バッテリーが満充電での保管を嫌うのに対し、LFPは満充電でも比較的安定しています。
UPSのように「常に満タンで待機し、いざという時(停電時)に100%の力を発揮する」という使い方に、まさに最適なバッテリーなんですね。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒LFPの弱点?リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリット
ポータブル電源のUPSの代わりになる機種
ここまでの技術的な話(切り替え時間、AVR、LFPバッテリー)を踏まえて、じゃあ具体的に「どの機種ならPC・NASを守れるの?」という、皆さんが一番知りたい機種選定の話に入っていきます。
ここでも重要なのは「切り替え時間」です。
「0ms(ゼロ)」「10ms(高速)」「20ms(低速)」の3つのグループに分けて、各社の代表的なモデルを、その「信頼性」も含めて見ていきましょう。
0msのオンラインUPS型モデル


「17msの壁」も「AVR機能の欠如」も、すべてを解決する最強の方式があります。
それが「常時インバーター(オンライン)方式」です。
これは、オフライン方式(停電時だけ切り替わる)とは根本的に異なります。
コンセントからの電力を「常に」バッテリーとインバーターを経由させてから機器に供給する方式です。
そのため、停電が起きても、機器側から見れば電力は一切途絶えません。
なぜなら、もともとバッテリー(とインバーター)から給電されているからです。
- 切り替え時間:
0ms(ゼロ)。停電という概念が機器側に存在しません。 - 電力品質:
常にインバーターを通るため、電圧のブレやノイズも除去され、クリーンな電力を供給できます(=AVR機能も内包)。
まさに完璧なUPSの代わりです。
ただし、これらは「ポータブル」というより「据え置き型」の超大型・高価格モデルが中心で、常にインバーターが動作するため消費電力やファンの音が気になる場合もあります。
- Zendure SuperBase V:
世界初の半固体電池を選べるなど、先進的な据え置きシステムです。 - EcoFlow DELTA Pro Ultra:
インバーターとバッテリーのセットが前提ですが、オンラインUPSとして動作します。 - BLUETTI EP500 Pro:
アプリで「標準UPSモード(オフライン20ms)」と「オンラインUPSモード(0ms)」を切り替え・カスタマイズ可能です。
データセンターやサーバー、絶対に止めたくない医療機器などを守るための、プロ仕様・家庭用蓄電池クラスの選択肢ですね。
インバーターについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒インバーターとは?わかりやすく基本と役割を解説
Anker C1000 Gen 2は10ms以下

「0msはオーバースペックすぎる…でもPCは守りたい」という方にとって、最も現実的かつ信頼できる選択肢となるのが、「実測10ms未満」の高速オフラインモデルです。
その代表格が、Anker Solix C1000 (Gen 2)です。
このモデルは、公称スペックで切り替え時間「10ms」を謳っています。
これは「17msの壁」も、厳しくなった「ATX 3.1の12msの壁」も、両方とも余裕をもってクリアできる速度です。
さらに私がこれを推薦する最大の理由は、公称値だけでなく、多くの第三者機関や海外の技術系レビアーによるオシロスコープ(波形測定器)を用いた実測テストでも、実際に10ms未満(多くの場合8ms前後)の高速かつクリーンな切り替えが確認されている点です。
「公称値は速いけど、実測したら遅かった…」という製品が残念ながら存在する中で、この「公称値と実測値が一致している」という信頼性の高さは、大事なデータを預ける上で何より大きな安心材料です。
PC・NAS保護の「次善の選択(コストと性能のバランス)」として、非常に有力な候補です。
【許容すべきリスク】
これはオフライン方式のため、AVR機能は非搭載です。
「停電(ブラックアウト)」からは守れますが、「電力品質(ブラウンアウト等)」からは守れないことを理解した上での導入となります。
Anker Solix C1000 (Gen 2)についてこちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒Anker Solix C1000 vs BLUETTI AC180 徹底比較!選ぶならどっち?
EcoFlow, Jackeryの公称値
他メーカーの公称値はどうなっているでしょうか。
ここで注意したいのは、先ほどAnkerの対比で述べた「公称値と実測値の乖離」や、そもそも「スペック上、PC保護が不可能な公称値」になっているケースです。
EcoFlow:モデルによるスペックの違いと信頼性
EcoFlowはモデルによってスペックが大きく異なるため、注意が必要です。
- EcoFlow DELTA Pro 3:
このフラッグシップモデルの公式スペックは「10ms」です(※一部の日本語サイトで古い情報が混在していることがありますが、公式マニュアルやグローバルサイトでは10msとなっています)。
Anker C1000 Gen2と同様に「高速オフライン」のカテゴリに入り、PC・NAS保護の候補となります。 - EcoFlow RIVER 3 Plus / Max:
一方で、これらの小型モデルは公称スペックで「<10ms(10ms未満)」と謳っています。
しかし、海外のユーザーコミュニティで、オシロスコープを使った詳細な実測テストが行われた結果、停電のタイミングによって最悪の場合「20.9ms」という、公称値を大幅に超える(そして17msの壁を破る)数値が記録されたとの詳細な報告があります。
これが全ての個体で発生するかは不明ですが、PC・NAS用途には「リスクあり」と判断せざるを得ません。
Jackery:スペックが「17msの壁」をクリアしていない
一方、Jackery Explorer 1000 Plus / 3000 New (v2) といった新モデルは、切り替え時間が「≤20ms(20ms以下)」と仕様表に明記されています。
これはEcoFlowとは逆で、スペックに偽りはないのかもしれませんが、残念ながら「20ms」という数値自体が「17msの壁」をクリアできていません。
公式サイトでは「ハードドライブの保護」なども謳っていますが、ATX規格のデスクトップPCやNASを停電から守ることは、スペック上不可能です。
公称値のワナに注意
このように、メーカーやモデルによって「公称値」の信頼性は様々です。
- Anker C1000 G2 / EcoFlow DELTA Pro 3:
公称 10ms。PC保護の「候補」となるスペック。Ankerは実測値の信頼性が高い報告が多いです。 - EcoFlow RIVER 3 Plus:
公称 <10ms → 実測で 20.9ms の報告があり、信頼性に疑問符。 - Jackery 1000 Plus:
公称 ≤20ms → スペック自体がPC保護(17ms)に非対応。 - UGREEN PowerRoam 2200:
仕様表に 10ms と 20ms が混在しており、メーカー仕様が信用できない。
「UPS機能搭載」という言葉だけでなく、「信頼できる実測値で10ms未満」であることを重視して選ぶ必要があります。
BLUETTIの機種別スペック


BLUETTIは、製品ラインナップによってUPSの方式がハッキリ分かれているのが特徴です。
購入時に分かりやすい反面、間違ったモデルを選ぶとPC用途には使えないため注意が必要です。
現在のBLUETTIのUPS対応モデルは、大きく分けて以下の2タイプが中心のようです。
オンラインUPS(0ms)モデル
先ほども紹介した「 EP500 Pro」などは、BLUETTIの据え置き型フラッグシップです。
アプリで「オンラインUPSモード」に設定することで、切り替え時間0msの真のUPSとして動作します。
信頼性は最も高いですが、価格もサイズも最大級です。
低速オフライン(20ms)モデル
「AC180」や「AC200L」などの現在の人気モデルは、ハッキリと「20ms」と公表されています。
これはJackeryと同様、スペックの時点でPC・NAS(17ms)向けではないことを示しています。
Wi-Fiルーターや照明など、20msの瞬断に耐えられる機器向けと割り切るべきモデルです。
このように、BLUETTIの現行ラインナップは、AnkerやEcoFlowが「10ms」モデルを投入しているのとは異なり、「0msのプロ仕様」か「20msの一般機器用」か、という2つの選択肢に集約されている傾向が見られます。
PC・NAS用途でBLUETTI製品を選ぶ場合は、実質的に「EP500 Pro」などのオンラインUPSモデルが主な選択肢になると言えそうです。
ポータブル電源 UPSの代わりを選ぶ結論
さて、長くなりましたが、ここまでの技術分析(17msの壁、AVRの欠如)と機種比較(0ms/10ms/20msの実態)を踏まえて、「ポータブル電源をUPSの代わりとしてどう選ぶか」の結論を、私の視点でまとめます。
すべては、「あなたが停電から守りたい機器は何か?」によって、選ぶべき答えが変わってきます。
「UPS機能搭載」という言葉だけで安易に選ぶと、いざという時に全く役に立たない「安物買いの銭失い」になりかねません。以下のガイドを参考に、ご自身の用途に合った正しいモデルを選んでください。
用途別:UPSの代わりを選ぶ推奨ガイド
| 守りたい機器 | 推奨する選択肢 | 理由と該当モデル例 |
|---|---|---|
| 【最重要】 PC (デスクトップ) NAS, サーバー (データ損失=絶対NG) | ベスト: 0ms (オンラインUPS) モデル 次善(現実的): 実測10ms未満モデル | ベスト:データ損失と電力品質(AVR)の両方から完璧に保護します。 (例:Zendure SuperBase V, BLUETTI EP500 Pro) 次善:停電(瞬断)からは確実に保護可能。安価だがAVR機能は諦める必要あり。 (例:Anker Solix C1000 G2, EcoFlow DELTA Pro 3) |
| 【通常】 Wi-Fiルーター ネットワーク機器 LED照明 (瞬断OK、復旧優先) | 20ms (低速オフライン) モデル | これらの機器は20msの瞬断に耐えられる場合が多いため、安価なモデルで十分です。 (例:BLUETTI AC180, Jackery 1000 Plus) ※PC・NASには使用厳禁! |
| 【要注意】 電圧が不安定な地域 (停電より電圧低下が頻発) | 0ms (オンラインUPS) モデル または 従来のAVR搭載UPS | AVR機能が必須です。AVR非搭載のポータブル電源(10ms/20ms機)は、不安定な電力を垂れ流すことになり、逆に機器を痛めるリスクがあります。 |
| 【リスク大】 PC・NAS用途で 非推奨 | 公称値と実測値が 乖離するモデル | 公称<10msでも、実測で20msを超える報告があるモデルは、信頼性が低く選択肢から除外すべきです。 (例:EcoFlow RIVER 3 Plus の一部報告) |
このように、「PCやNASのデータを守りたい」のであれば、選択肢は「0msのオンラインUPS型」か、「Anker C1000 G2やEcoFlow DELTA Pro 3のような、公称値10ms(かつ実測値が信頼できる)モデル」の二択に絞られる、というのが私の結論です。
「UPS機能搭載」と書かれた20msのモデルを買って、「停電時にPCが落ちた!」と後悔しないためにも、ご自身の用途に合った「切り替え時間」をしっかり確認してくださいね。
この記事で紹介した情報は、私が個人的に調査した時点でのものです。各製品の仕様や規格(ATX規格など)は変更される可能性があります。
また、切り替え時間などの数値はあくまで一般的な目安であり、全ての環境での動作を保証するものではありません。
特にPCやNASなど、重要なデータを扱う機器の保護に関しては、ご自身の責任において最終的な判断をお願いいたします。
不明な点や不安な点は、必ず各メーカーの公式サイトで最新情報を確認するか、専門家にご相談ください。
