こんにちは。電源LABO、運営者の「きっちゃん」です。
近年、地震や台風、線状降水帯による集中豪雨といった自然災害が頻発し、私たちの平穏な生活を脅かしています。
テレビのニュースで被災地の過酷な状況を見るたびに、「もし今この瞬間、自分の住む地域で大規模な停電が起きたら、数日間も電気なしで家族を守れるだろうか?」と、漠然とした不安に襲われることはありませんか。
災害への備えとして、防災用バッテリーや大容量のポータブル電源、そして電気を自給自足するためのソーラーパネルを検討する方が、今、爆発的に増えています。
しかし、いざ購入しようとネットで検索してみると、その種類の多さと専門用語の壁に圧倒されてしまうのが現実です。
「mAh」や「Wh」といった単位の違い、定格出力と瞬間最大出力の罠、あるいは「リン酸鉄リチウムイオン」といった聞き慣れない素材名に戸惑い、結局どれが自分の家に必要なのか分からなくなってしまうことも多いはずです。

また、せっかく高いお金を出して買ったのに、いざ真冬の停電で使おうとしたら充電できなかったり、数年後に買い替えようとしたら廃棄方法がなくて途方に暮れたりといったトラブルも、実は少なくありません。
この記事では、私が長年にわたり様々なポータブル電源を実際に使用し、検証してきた経験をもとに、災害時に本当に役立つバッテリーの選び方や、いざという時に失敗しないための運用方法について、初心者の方にも分かりやすく、かつ徹底的に解説していきます。
- スマホの通信を確保するためのモバイルバッテリーとポータブル電源の決定的な使い分け
- 停電が長期化した際に生死を分けるかもしれない、ソーラーパネルの現実的な発電能力
- 安全性が高く、10年以上使える寿命を持つリン酸鉄リチウムイオン電池を選ぶ本当のメリット
- 意外と見落としがちな冬場の「充電不可」トラブルや、購入前に知っておくべき廃棄時の注意点
防災用バッテリーの選び方と必要容量の目安
一言で「防災用にバッテリーを用意する」といっても、その目的やシチュエーションによって必要なスペックは全く異なります。
例えば、津波や火災の危険があり、命からがら避難所へ逃げる「緊急避難」の場合と、自宅の倒壊リスクは低いもののライフラインが寸断された状態で生活を続ける「在宅避難」の場合では、求められる電源の「質」と「量」がまるで違うのです。
ここでは、具体的な用途に合わせたバッテリーの選び方と、災害時に最低限確保しておきたい容量の目安について、具体的な数字を交えながら深掘りして解説していきます。
スマホ充電に必須なモバイルバッテリー

災害発生直後、私たちにとって最も重要なライフラインとなるのがスマートフォンの通信機能です。
家族の安否確認、SNSや自治体サイトからの避難情報の収集、そして懐中電灯代わりのライト機能など、スマホの電池切れはまさに命取りになりかねません。

ポータブル電源のような大型機器を検討する前に、まずは家族全員が手軽に持ち運べるモバイルバッテリーを確実に確保することが、防災対策の「一丁目一番地」です。
避難所への徒歩移動を想定する場合、最も重要なのは「軽さ」と「容量」のバランスです。
常に通勤カバンや通学バッグに入れておく「第一次持ち出し品」としては、重さが気にならない10,000mAhクラスが最適ですが、防災リュックに入れておく備蓄用(第二次持ち出し品)としては、多少重くても20,000mAh以上の「超大容量クラス」を強くおすすめします。
モバイルバッテリー選びのポイント:なぜ20,000mAhなのか?

一般的なスマートフォンのバッテリー容量は3,000mAh〜4,000mAh程度ですが、iPhone 15 Pro Maxなどの最新ハイエンド機種は5,000mAhに迫るものもあります。
20,000mAhのモバイルバッテリーがあれば、電圧変換ロス(実効容量は約60〜70%)を考慮しても、最新のスマホを約2回〜4回フル充電することが可能です。
これは、自分だけでなく家族やパートナーのスマホを充電したり、避難所での生活が数日間に及んだりした場合でも、通信手段を維持できる「エネルギーの保険」として機能します。
また、容量と同じくらい重要なのが「出力(W数)」と「充電速度」です。
避難所では、発電機や支援物資の電源タップなど、コンセントが使える機会が巡ってくるかもしれません。
しかし、その時間は限られており、長蛇の列による順番待ちが発生することも予想されます。
そんな時、短時間で多くの電気を蓄えられる「急速充電」能力が大きな意味を持ちます。
具体的には、USB Power Delivery (PD) に対応したモデルを選びましょう。
例えば、最大30Wや65Wの入力に対応したバッテリーなら、数時間の充電で満タン近くまで回復させることができます。
そして忘れてはならないのが、その速度に対応した「ケーブル」と「充電器」もセットで用意しておくことです。
バッテリー本体が高性能でも、ケーブルが100円ショップの低速用であれば、その性能は発揮されません。
さらに、長期保管を考えるなら「乾電池式モバイルバッテリー」も併せて用意しておくと安心です。
リチウムイオン電池は放置すると自然放電してしまいますが、乾電池なら10年保存可能なものもあり、コンビニや支援物資で電池さえ入手できれば、半永久的に電源を確保できるバックアップとして機能します。
家電も動かせる大容量ポータブル電源

在宅避難や車中泊避難を選択する場合、ACコンセント(100V)が出力できる「ポータブル電源」があるかどうかで、避難生活の質、ひいては健康状態が大きく左右されます。
特に、真冬の停電時において暖房器具が使えるか、真夏の停電時に扇風機が回せるかは、低体温症や熱中症を防ぐための死活問題になります。
私が防災用として推奨する容量の目安は、ズバリ容量1,000Wh(ワットアワー)クラスのポータブル電源です。

市場には400Wh程度の小型モデルもありますが、防災用としては心許ないのが本音です。
1,000Whクラスであれば、消費電力が比較的低い「電気毛布」を複数回稼働させることが可能であり、これは救助や復旧が来るまでの「72時間の壁」を乗り越えるための現実的なラインとなります。
| 家電製品 | 消費電力の目安 | 1000Whポータブル電源での使用感 |
|---|---|---|
| スマホ充電 | 約10〜15W | 約60回以上充電可能。家族4人が1週間使っても余裕があり、情報収集用端末の電源として盤石です。 |
| 電気毛布 | 約40〜60W | 約15〜20時間稼働(中設定)。DC/AC変換ロス(約20%)を考慮しても、冬の夜を2〜3晩しのぐことができます。 |
| 電気ケトル | 約800〜1200W | 稼働時間は約40分〜1時間程度。 ※定格出力1000Wのモデルでは、一般的な家庭用ケトル(1200W〜)は安全装置が働き、使用できないことがほとんどです。 |
| セラミックヒーター | 600〜1200W | 1時間も持たない可能性が高く、防災用としては極めて不向きです。部屋全体を暖めるのは諦めましょう。 |
| 扇風機・サーキュレーター | 約20〜40W | 約20〜40時間稼働。夏の停電時、熱中症対策として数日間回し続けることが可能です。 |
※使用時間は、AC出力時の変換ロス(約20%程度)や外気温、家電の設定温度により変動する目安です。
1000Whクラスのポータブル電源で何ができるのか、こちらの記事でもっと詳しく取り上げています。
⇒1000Whでどれくらい使える?ポータブル電源の容量目安とおすすめ機種
ここで特に注意していただきたいのが、「定格出力(W)」の罠です。

表にも記載しましたが、一般的な家庭用の電気ケトル(T-falなど)は消費電力が1250W〜1300Wほどあります。
もし購入したポータブル電源の定格出力が「1000W」だった場合、容量がどれだけ残っていても、安全装置が働いて動作しません。
電気ケトルやドライヤーを使いたい場合は、定格出力が1500W以上の高出力モデルを選ぶか、消費電力が500W〜800W程度の「トラベル用ケトル」や「ポータブル電源対応家電」を別途用意する必要があります。
EcoFlowのX-BoostやBLUETTIの電力リフト機能であれば、動作は可能です。
こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒EcoFlow(エコフロー)のX-Boostとは?仕組みとメリット・注意点を解説
⇒BLUETTIの電力リフト機能の仕組みとは?使えない家電と注意点
また、波形は家庭用コンセントと同じ滑らかな「正弦波(純正弦波)」を選んでください。
安価なモデルにある「矩形波(修正正弦波)」では、精密機器やマイコン制御の電気毛布が故障する原因になります。
さらに、普段使いしながら充電状態を維持できる「パススルー充電」機能も重要ですが、選ぶ際は「バイパス機能付き」かどうかに注目してください。
これは、コンセントからの電力をバッテリーを経由せず、直接家電にバイパスして送る機能です。
これならバッテリーの充放電回数を無駄に消費せず、劣化を防ぎながら常に満充電をキープできます。
いざ使おうと思った時に充電が空っぽだったという悲劇を防ぐ「UPS(Uninterruptible Power Supply)機能」「EPS(Emergency Power Supply)機能」と併せて確認しましょう。
パススルー充電でについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒パススルー充電で劣化する?仕組みと対策を徹底解説【ポータブル電源】
ソーラーパネル充電で停電長期化に備える

大容量のポータブル電源があれば安心と思いがちですが、バッテリーの中身はあくまで「有限な水」のようなものです。停電が3日以上続いた場合、再充電する手段がなければ、それはただの重い箱になってしまいます。
そこで、外部からエネルギーを補給する唯一の手段として重要になるのが「ソーラーパネル」です。
しかし、ソーラーパネルについては過度な期待は禁物であり、正しい知識を持つことが不可欠です。
カタログスペックで「最大200W発電」と書かれていても、その数値が出るのは真夏の快晴時、太陽に向けて最適な角度(90度)で設置した一瞬だけです。
実際には、快晴でも定格の70〜90%程度、薄曇りやガラス越しの設置では40〜60%、そして薄曇りでは10〜20%程度しか発電しません。

天候による発電量の大幅な低下
特に注意が必要なのは、雨雲のような厚い雲に覆われた日です。
このような本格的な曇り空では、発電量がほぼ0〜5%(数ワット)程度まで落ち込み、実質的に充電がストップすることもあります。
「曇りでも200Wパネルなら40Wくらい出るはず」と期待しすぎると、痛い目を見ることになります。
それでもある「30W」の価値
「曇りでたった30Wしか発電しないなら意味がない」と思うかもしれません。
確かに、1000Whのポータブル電源を満タンにするには30時間以上かかるため、家電を動かすための電力としては力不足です。
しかし、30Wあれば、スマートフォン2台分の充電電力を賄うことができます。
災害時に最も恐ろしいのは「情報からの途絶」です。
「家電を動かすには足りないが、情報を得るためのスマホやラジオは維持できる」と割り切って考えることができれば、悪天候時のわずかな発電量でも心の安定に繋がります。
選び方のポイントとしては、ポータブル電源と同じメーカーの純正パネルを選ぶのが無難ですが、変換効率の良い「単結晶シリコン」を採用したものや、発電効率を最大化する「MPPT制御」方式に対応したものを選ぶと、悪条件下でもより多くの電力を得られます。
接続端子の種類が多く、接続出来ないケースもありますので、セット購入がおすすめです。
⇒【ポータブル電源とソーラーパネル】メーカーの違い!セット購入がおすすめ
また、設置場所も重要です。
ベランダの手すりに吊り下げられるようなハトメ(穴)がついているか、自立スタンドの角度調整がしやすいかなど、実際の避難環境を想定して形状を選びましょう。
災害時にソーラーパネルが必要なのかについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒災害時にソーラーパネルは必要か?後悔しない選び方と活用法
寿命が長いリン酸鉄リチウムイオンの魅力
ここ数年、ポータブル電源市場で急速に主流になりつつあるのが、「リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)」を採用したモデルです。
これから新しく防災用バッテリーを購入するのであれば、私は迷わずこのタイプを強くおすすめします。

最大の理由は、何と言っても「安全性」と「圧倒的な長寿命」です。
従来主流だった三元系(ニッケル・コバルト・マンガン)リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く軽量な反面、高温になると酸素を放出して熱暴走(発火)しやすいというリスクがありました。
一方、リン酸鉄リチウムは結晶構造が非常に強固で、約600℃まで熱分解が起きません。
つまり、万が一の衝撃や短絡があっても、発火や爆発に至るリスクが極めて低いのです。
就寝時に枕元で使用したり、可燃物の多い屋内で保管したりする防災用品として、この安全性は絶対的な安心感につながります。
さらに、寿命の長さも桁違いです。
三元系のサイクル寿命(容量が80%に低下するまでの充放電回数)が500回〜800回程度なのに対し、リン酸鉄リチウムは2,000回〜4,000回以上を誇ります。
これは、仮に毎日充放電を繰り返しても、10年以上使用できる計算です。
防災用品は「一度買ったら長く放置する」ものではなく、「日常的に使いながら備える(フェーズフリー)」ものへと変わってきています。
初期費用は若干高くなり、重量も少し重くなりますが、10年間買い替え不要であることを考えれば、長期的なコストパフォーマンス(TCO)は抜群に優れています。

そんなリン酸鉄リチウムイオン電池にもデメリットがある?こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒LFPの弱点?リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのデメリット
ラジオや情報収集を維持する電源確保
災害時、SNS上には救助要請などの有益な情報と同時に、不安を煽るようなデマや不確定な情報が飛び交うことがあります。
そんな混乱した状況下で、公式かつ確実な情報を得るための最後の砦となるのが「ラジオ」です。
基地局がダウンしてスマホが繋がらなくなったとしても、ラジオ波は受信できる可能性が高いからです。
ラジオの最大のメリットは、その圧倒的な省電力性にあります。
消費電力はわずか数ワット以下であり、単3乾電池2本で数十時間稼働するものも珍しくありません。
ポータブル電源の貴重な電力をスマホの充電や暖房に回すためにも、情報収集用の電源は乾電池でまかなうのが賢い戦略です。
多層的な電源確保のススメ

一つの巨大な電源に全てを依存するのはリスクがあります。
もしポータブル電源が故障したら、全てが止まってしまうからです。
- メイン電源: 大容量ポータブル電源(家電・暖房用)
- サブ電源: 20,000mAhモバイルバッテリー(スマホ通信用)
- バックアップ: 乾電池式充電器 & 手回し充電ラジオ(最終手段)
このように、電源の種類と熱源を分散させておく「多層的な防御網」こそが、想定外の事態が起きる災害時に、あなたと家族を守る最強の備えとなります。
最近の防災ラジオには、手回し充電機能やソーラーパネル、さらにはライトやサイレン機能まで付いた多機能モデルも多く販売されています。
また、AM放送をクリアなFM波で聴ける「ワイドFM」対応機種を選んでおくと、ビル陰や室内でも受信しやすくなります。
防災用バッテリーの保管方法と廃棄の注意点
「高性能なポータブル電源を買ったから、これで安心!」と満足してしまい、そのまま押入れの奥にしまい込んでいませんか?
実は、バッテリーは生き物のようなもので、適切な管理をしないと性能が劣化したり、いざという時に使えなかったりします。
さらに、寿命を迎えた後の「捨て方」を知らないと、将来的に大きなトラブルを抱えることになります。
ポータブル電源の保管方法について、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒ポータブル電源の保管方法は?寿命を延ばす充電率と注意点
冬の寒さで充電できない事態を防ぐ対策
意外と知られていない、しかし致命的な落とし穴が、リチウムイオン電池の「低温充電NG」という特性です。
多くのポータブル電源の取扱説明書には、動作温度が「-10℃〜40℃」などと書かれていますが、よく見ると「充電温度」は「0℃〜40℃」と記載されているケースがほとんどです。
これは、氷点下(0℃以下)の環境でリチウムイオン電池に充電を行うと、内部で「リチウム金属の析出(電析)」という現象が発生し、バッテリーのセパレータを突き破ってショートや発火を引き起こす危険性があるためです。
最近の賢いバッテリーマネジメントシステム(BMS)は、この危険を回避するために、0℃以下を検知すると強制的に充電をシャットダウンします。
BMSとは?こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒ポータブル電源のBMSとは?安全と寿命を左右する仕組み
冬の停電時のシミュレーション
真冬に大地震が発生し、停電。暖房が止まった室内は氷点下まで冷え込みました。
翌朝、太陽が出てきたのでソーラーパネルを接続しましたが、画面にはエラー表示が出て一向に充電されません。
これは故障ではなく、低温保護機能が働いているためです。
つまり、「寒くて一番電気が欲しい時ほど、電気が作れない」というジレンマに陥るのです。
対策としては、単純ですが「バッテリーを冷やさない」ことが重要です。
使用中はバッテリー自体が熱を持つので問題ありませんが、保管時や充電前には、発泡スチロールの箱に入れたり、毛布で何重にも包んだりして、バッテリー温度を0℃以上に保つ工夫が必要です。
また、北海道や東北などの寒冷地にお住まいの場合は、-10℃や-20℃でも充電できるようにヒーター機能などを搭載した「寒冷地対応モデル」を選ぶのが賢明です。

日本製メーカーを選ぶ際の安心感と注意点
防災用品という性質上、「信頼できる日本製が良い」と考える方は非常に多いです。
しかし、ポータブル電源業界の現状をお話しすると、現在市場に出回っている製品の9割以上は、製造自体を中国などの海外工場で行っています。
内部のセル(電池)から外装の組み立てまで全てを日本国内で行っている「純日本製」は極めて稀です。
では、日本メーカー(ブランド)を選ぶ意味はないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
重要なのは「製造場所」ではなく「品質管理(QC)」と「サポート体制」です。
海外製造であっても、日本メーカーが設計に関与し、厳しい日本の品質基準で出荷前検査を行っている製品は、初期不良率が圧倒的に低いです。
また、万が一故障した際の対応も雲泥の差があります。
海外の新興メーカーの場合、問い合わせ先が英語のみだったり、修理拠点が国内になく、故障したら新品交換か返金対応(そして数週間待たされる)のみだったりすることがあります。
一方、日本に法人や代理店を持つしっかりしたメーカーであれば、日本語での電話サポートが受けられ、国内の修理センターで迅速に対応してもらえます。
保証期間も2年〜5年と長期に設定されていることが多く、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入も確認できるため、長く使う防災用品としては大きな安心材料になります。
安い製品に潜むリスクと安全基準PSE
Amazonや楽天などのネット通販を見ていると、スペックの割に驚くほど安いポータブル電源やモバイルバッテリーを見かけることがあります。
「たまにしか使わない防災用だし、安いのでいいか」と飛びつきたくなりますが、そこには見えないリスクが潜んでいます。
まず確認すべきは「PSEマーク(電気用品安全法)」です。ここは少し複雑なので、注意して確認してください。
- モバイルバッテリー:
「丸形PSEマーク」の表示が義務付けられています。
これがない製品は違法であり、絶対に買ってはいけません。 - ポータブル電源:
本体は現在、法律上の扱いがモバイルバッテリーとは異なるため、PSEマークの表示義務がない製品も存在します(規制対象外のケースが多い)。 - 付属ACアダプター:
コンセントからポータブル電源を充電するためのアダプターには、「ひし形PSEマーク」が法的に必須です。
このように、ポータブル電源本体にPSEマークがなくても違法ではない場合がありますが、充電用のアダプターにすらマークがない製品は論外です。
また、法的な義務の有無に関わらず、自主的に高い安全基準をクリアしている製品を選ぶ必要があります。
例えば、国連が定める輸送基準「UN38.3」や、世界的な安全規格「UL認証」を取得しているかどうかが一つの目安になります。
バッテリーの発火事故は、家を失う火災に直結します。「安さ」よりも「安全性」にコストをかけるという意識を持つことが、防災の第一歩です。
自治体で捨てられないポータブル電源の廃棄
購入時にはあまり考えませんが、防災用バッテリー運用において最も厄介で見落とされがちなのが「出口戦略」、つまり廃棄方法です。
ポータブル電源に使われている大型のリチウムイオン電池は、発火の危険性が高いため、多くの自治体で「適正処理困難物」として指定されており、燃えるゴミはもちろん、不燃ゴミや粗大ゴミとしても出すことができません。

環境省の案内によれば、不要になったリチウムイオン電池は、市区町村のルールに従うか、協力店のリサイクルBOXを利用することとされています(出典:環境省『リチウムイオン電池関係』)。
しかし、家電量販店などに設置されている「JBRC回収ボックス」は、基本的に小型のモバイルバッテリーなどが対象であり、大型のポータブル電源は回収対象外として断られるケースがほとんどです。
購入前に必ず確認すべきこと

そのメーカーは「自社製品の回収サービス」を行っていますか?
費用は無料ですか、有料ですか?
Jackery(ジャクリ)、EcoFlow(エコフロー)、Anker(アンカー)といった主要メーカーは、自社製品の無料回収サービス(送料はユーザー負担の場合あり)を提供していますが、無名の格安メーカーや、クラウドファンディングで一時的に販売された製品には、そうした回収制度がないことが多いです。
その場合、高額な費用を払って不用品回収業者に依頼するしかなくなります。
将来、処分する時に途方に暮れないよう、購入の段階で「廃棄ルート」が確保されているメーカーを選ぶことを強くおすすめします。
防災用バッテリーで備える安心な生活の実現

防災用バッテリーは、単に「もしもの時のための道具」として押入れにしまい込んでおくものではありません。
それではバッテリーが劣化するだけでなく、いざという時に使い方が分からず、パニックになってしまいます。
理想的なのは、日々の生活の中で使いながら備えることです。
例えば、天気の良い日はソーラーパネルで発電してスマホを充電してみる、休日のキャンプや車中泊で電気毛布を使ってみる、ベランダでのリモートワークに使ってみる。
こうした日常的な使用を通じて、バッテリーの減り具合や充電にかかる時間を肌感覚で理解しておくことこそが、本当の意味での「防災訓練」になります。
適切な容量を選び、安全で長寿命なリン酸鉄リチウムイオン電池を選定し、そして廃棄のことまで責任を持ってくれるメーカーを選ぶ。
- 避難用: 20,000mAhのモバイルバッテリー(PD対応)
- 自宅用: 1000Wh以上のポータブル電源(リン酸鉄リチウム)
- 充電用: ソーラーパネル(過度な期待はせず情報収集用と割り切る)
- 確認!: メーカーの「無料回収サービス」の有無
この準備さえできていれば、万が一の災害時にも、あなたと大切な家族の生活を守る、頼もしい相棒となってくれるはずです。
ぜひ、この記事を参考に、ご自身のライフスタイルに合った最適な一台を見つけてみてください。
