こんにちは。電源LABO、運営者の「きっちゃん」です。
昨今のキャンプブームや防災意識の高まりで、ポータブル電源を検討する方が非常に増えています。
しかし、いざ購入しようとカタログやECサイトを見ても、「Wh(ワットアワー)」や「mAh(ミリアンペアアワー)」といった専門用語が並んでいて、頭を抱えてしまった経験はありませんか?
「この20000mAhのモバイルバッテリーと、200Whのポータブル電源、どっちが凄いの?」
「500Wの電子レンジを動かすには、何Whあればいいの?」
このような疑問を持つのは当然のことです。
実は、ポータブル電源の容量選びには、メーカーのカタログ値だけを見ていては分からない「隠れたルール」が存在します。
これを知らずに「数字が大きいから大丈夫だろう」と購入してしまうと、いざという時に「あれ?もう電池がない!」と後悔することになりかねません。
この記事では、文系の方でも絶対に理解できる「容量計算の公式」と、失敗しないための「目安の立て方」を、専門用語をできるだけ噛み砕いて徹底解説します。
正しい計算方法を身につければ、無駄に高いハイスペック機を買って財布を痛めることも、安物買いの銭失いになることもなくなりますよ。
- カタログスペックと「実際に使える電気」の決定的な違い
- 誰でも30秒でできる!使いたい家電の稼働時間計算式
- 見落としがちな「変換ロス」や「放電深度」の正体
- ソーラーパネルでの発電量を予測するリアルな計算方法
ポータブル電源の容量計算と基礎知識
それでは早速、ポータブル電源選びの核心部分である「数字の読み方」と「計算の基礎」について解説していきます。
「計算」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、使うのは掛け算と割り算だけ。
小学生の算数レベルで解決できますので、リラックスして読み進めてくださいね。
WとWhの違いや単位を解説

ポータブル電源のスペック表を見ると、必ず「W(ワット)」と「Wh(ワットアワー)」という2つの単位が登場します。
この2つの違いを明確にイメージできているでしょうか?ここを混同してしまうと、ポータブル電源選びは失敗します。
「蛇口」と「バケツ」でイメージしよう
電気の話は目に見えないので分かりにくいですが、「水」に例えると一発で理解できます。
WとWhの決定的な違い
- W(ワット)=「蛇口の大きさ(水の勢い)」
一度にどれだけのパワーを出せるかを表します。ドライヤーや電子レンジなど、熱を発する家電は巨大な蛇口(高いW数)を必要とします。 - Wh(ワットアワー)=「バケツの大きさ(水の量)」
タンクの中にどれだけの電気が入っているかを表します。この数値が大きければ大きいほど、長時間使い続けることができます。
例えば、「定格出力1000W / 容量500Wh」のポータブル電源があったとします。
これは「蛇口はすごく大きい(1000Wのドライヤーも動く)けれど、バケツは小さい(30分で空っぽになる)」という状態です。
逆に、「定格出力300W / 容量1000Wh」の機種は、「蛇口は小さい(ドライヤーは動かない)けれど、バケツは巨大(スマホ充電や扇風機なら何十時間も動く)」という性質を持ちます。
W(ワット)とWh(ワットアワー)の違いについて、こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒W(ワット)とWh(ワットアワー)の違いを解説!最適なポータブル電源選びの鍵
よくある罠:「mAh」の表記に騙されないで!
もう一つ、皆さんを混乱させるのがモバイルバッテリーでよく見る「mAh(ミリアンペアアワー)」という単位です。
「20,000mAh」と聞くと、なんだかすごく大容量に聞こえますよね?
しかし、ポータブル電源の「Wh」と比較する際、この「mAh」の数字をそのまま信じてはいけません。
なぜなら、モバイルバッテリー(3.7V)とポータブル電源(10V〜20V以上など)では、ベースとなる電圧が異なるからです。
【比較のための換算式】
Wh = Ah × V(電圧)
例:20,000mAh(20Ah)のモバイルバッテリーの場合
20Ah × 3.7V = 74Wh
計算してみると、20,000mAhという巨大に見える数字も、Whに直すとたったの「74Wh」しかありません。
300Whのポータブル電源と比較すると、その差は歴然です。
ポータブル電源の容量を比較する際は、必ず「Wh」という共通の物差しで判断するようにしましょう。
実効容量の計算式と変換ロス

「よし、1000Whのポータブル電源を買ったから、1000Wのドライヤーが1時間きっかり使えるはずだ!」
残念ながら、この計算は間違いです。
実際に使ってみると、おそらく45分〜50分程度で電池切れになってしまうでしょう。
なぜカタログ通りの容量が使えないのでしょうか?
そこには、ポータブル電源という機械の仕組み上、どうしても避けられない「2つのロス」が存在するからです。
1. DC/AC変換ロス(インバーターの熱損失)
ポータブル電源の内部に積まれているバッテリー(リチウムイオン電池)は、乾電池と同じ「直流(DC)」で電気を蓄えています。
しかし、私たちが普段コンセントで使っている家電は「交流(AC)」で動きます。
そのため、ポータブル電源は内部で「直流」を「交流」に変換して出力しているのですが、この作業をする際にエネルギーの約10%〜15%が「熱」として逃げてしまいます。
ポータブル電源を使っているとファンが回って排熱音がしますよね?
あれは、変換時に発生した熱を逃がしている音なのです。つまり、その分だけ電気を無駄に使っていることになります。
インバーターって何?こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒インバーターとは?わかりやすく基本と役割を解説
2. 放電深度(DOD)による保護領域
リチウムイオン電池は、残量が完全に0%(過放電)になると、電池としての性能が著しく劣化し、最悪の場合は二度と充電できなくなってしまいます。
これを防ぐため、メーカーはあらかじめ「液晶画面では0%と表示されているけれど、実は内部に少しだけ電気を残して強制終了させる」という安全装置(BMS)を組み込んでいます。
これを「放電深度(DOD)」と呼び、一般的に容量の約10%程度がこの保護領域として確保されています。
BMS(バッテリーマネージメントシステム)とは?こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒ポータブル電源のBMSとは?安全と寿命を左右する仕組み
「×0.8」の魔法の数字を覚えよう
「変換ロス」と「放電深度」。この2つを差し引くと、私たちが実際に家電を動かすために使える電気の量(これを実効容量と呼びます)は、スペック値の約60%〜80%程度になります。
計算が複雑になると面倒なので、私はいつも「掛け率0.8」で計算することをおすすめしています。
【実効容量のリアルな計算式】
スペック容量(Wh) × 0.8 = 実際に使える容量
例:500Whの機種なら
500Wh × 0.8 = 約400Wh
この「400Wh」こそが、あなたが現場で頼りにできる本当の体力です。
購入前のシミュレーションでは、必ずこの0.8掛けた数字を使うクセをつけてください。
そうすれば、「思ったより持たなかった」というガッカリ感を完全に防ぐことができます。
家電の消費電力から時間を計算

自分の持っているポータブル電源の「実効容量」が把握できたら、次はいよいよ「使いたい家電が何時間動くか」を計算してみましょう。
基本の計算フォーマット
計算式は非常にシンプルです。
稼働時間の計算式
実効容量(Wh) ÷ 家電の消費電力(W) = 使用可能時間(時間)
具体例をいくつか挙げてみましょう。実効容量400Wh(500Whクラスの機種)を使用すると仮定します。
| 家電製品 | 消費電力(W) | 計算式と使用時間 |
|---|---|---|
| 電気毛布(中) | 50W | 400Wh ÷ 50W = 8時間 ※常に50W消費し続けた場合の計算です。実際は温度調整で消費が下がる時間もあるため、もう少し長く持つ可能性があります。 |
| 車載冷蔵庫 | 45W | 400Wh ÷ 45W = 約8.8時間 ※コンプレッサー停止時を含めるともっと伸びます |
| LEDランタン | 10W | 400Wh ÷ 10W = 40時間 ※2泊3日でも余裕です |
要注意!「起動電力」という落とし穴
計算上は「動くはず」なのに、いざコンセントに挿すと「プツン」と電源が落ちてしまうことがあります。
その犯人は「起動電力(突入電流)」です。
特にモーターを搭載した家電(冷蔵庫、扇風機、電動工具、ポンプなど)は、動き出す瞬間に、通常の消費電力の3倍〜5倍もの電気を一瞬だけ必要とします。
例えば、通常運転時は50Wの冷蔵庫でも、起動する瞬間に200W〜300W必要になることがあるのです。
この一瞬のピークにポータブル電源の「定格出力」や「瞬間最大出力」が耐えられないと、安全装置が働いて停止してしまいます。
定格出力・瞬間最大出力(サージ)とは?こちらの記事で詳しく取り上げています。
⇒定格出力と最大出力の違いとは?ポータブル電源選びの失敗を防ぐ
【正弦波を選ぼう】
モーター製品を使う場合は、必ず「純正弦波(正弦波)」を出力できるポータブル電源を選んでください。安価なモデルにある「矩形波」や「修正正弦波」では、モーターが回らなかったり、故障の原因になったりすることがあります。
スマホ充電回数の計算は少し特殊
「スマホは何回充電できるの?」という疑問に対しては、少し計算式が変わります。
スマホの内蔵バッテリー(3.7V)とUSB出力(5V〜)の間で電圧変換が行われるためです。
難しい理屈は抜きにして、ざっくりとした回数を知りたい場合は、以下の簡易式を使ってください。
実効容量(Wh) ÷ 12Wh 〜 15Wh(スマホ1回分の目安)
例えば400Whの実効容量があれば、400 ÷ 15 = 約26回。家族4人でキャンプに行っても、全員がフル充電できるだけの余裕があることが分かりますね。
ソーラーパネルの発電量を計算

「ポータブル電源本体の容量計算は分かったけれど、ソーラーパネルはどれくらい発電するの?」
これも非常によくある質問です。
特に防災用や連泊キャンプを想定している方にとって、太陽光発電は生命線となります。
スペック通りには絶対に発電しない
まず大前提として、ソーラーパネルの商品名にある「100W」や「200W」という数字は、「真夏の快晴時、太陽が真上にあって、パネルに対して垂直に光が当たっている」という、実験室のような最高条件での理論値です。
実際のアウトドア環境では、雲の流れ、空気中の塵、パネルの温度上昇(熱すぎると発電効率が落ちます)、そして太陽の角度のズレなどが発生します。
そのため、実際の発電量はスペック値の60%〜70%程度出れば「かなり優秀」だと考えてください。
実発電量の計算式
より現実的な発電量を予測するための計算式はこちらです。
1日の発電量シミュレーション
パネル出力(W) × 0.7(効率係数) × 日照時間(h)
例えば、「200W」のソーラーパネルを使って、晴天の日に「5時間」充電できたとしましょう。
200W × 0.7 × 5時間 = 約700Wh
ここでの「5時間」というのは、太陽が高く昇っている10:00〜14:00頃を中心とした、最も発電効率が良い時間帯(コアタイム)を指します。
朝夕の弱い日差しも含めてダラダラと充電するより、このコアタイムにいかにパネルへ直射日光を当て続けられるかが勝負になります。
700Whあれば、スマホを数十回充電し、夜間のLEDライトを点灯し、電気毛布を一晩使うことができます。
つまり、200Wクラスのパネルがあれば、天候さえ良ければ電気を「自給自足」できる可能性が高いということです。
環境省のデータによれば、太陽光発電設備は設置条件(方位や角度)によって発電量が大きく変動することが示されています。
少し角度を変えるだけでも発電効率は劇的に変わるので、マメな角度調整が大切です。
目的別ポータブル電源の容量計算と選び方
計算方法はわかりましたが、実際に商品を選ぶとなると「結局、どの容量帯が自分に合っているの?」と迷ってしまいますよね。
ここからは、容量クラスごとの特徴と、具体的な「できること・できないこと」をシミュレーションしていきます。
300Whから2000Whまで、それぞれの容量がどのようなシーンに最適なのか、私の実体験を交えて詳しく解説します。ご自身の利用シーンを想像しながら読み進めてみてください。
300Whの用途と目安を解説

ポータブル電源のエントリーモデルとして、最も手軽で親しみやすいのが300Whクラスです。
価格も2万円〜3万円台と比較的安価で、ホームセンターなどでもよく見かけるサイズですね。
【この容量の特徴】
最大の特徴は、何と言っても「軽さとコンパクトさ」です。
重量は3kg〜4kg程度のものが多く、女性や子供でも片手で軽々と持ち運べます。
リュックに入れて持ち運べるモデルもあるほどです。
一方で、定格出力(蛇口の大きさ)は200W〜300W程度の機種が多く、ドライヤーや電気ケトル、炊飯器といった「熱を生み出す家電」は基本的に使えません。
あくまで「小型デジタル機器の充電」や「省電力な家電」専用と割り切る必要があります。
【ヒーター類に注意】
特に注意が必要なのが「セラミックファンヒーター」です。
「小さいから使えるだろう」と思われがちですが、これらは小型でも600W〜1200Wの電力を消費します。
300Whクラスの電源に繋ぐと、安全装置が作動して一瞬で止まってしまうので注意してください。
【具体的な計算と使用感】
実効容量の目安:約240Wh(300Wh × 0.8)
- スマートフォン(12Wh):約20回充電可能
家族4人のスマホを1泊2日でフル充電し続けても、まだ余力があります。 - ノートパソコン(50Wh):約4〜5回充電可能
テレワークや、キャンプで映画を見る程度なら十分対応できます。 - 扇風機(20W):約12時間
夏のデイキャンプや、テント内の空気循環用として丸一日回し続けられます。 - 電気毛布(50W):約4.8時間
ここが注意点です。「弱」設定で30W程度に抑えれば7〜8時間持つこともありますが、寒さが厳しい夜に「強」で使うと、明け方前に電池が切れて寒さで目が覚める可能性があります。
300Whクラスは「小さくても力持ち」な頼れる相棒ですが、限界を知らずに買うと「あれが動かない!」となりがちです。
以下の記事では、300Whで実際に何ができるのか、限界ラインを徹底的に検証しています。
⇒【ポータブル電源】容量300Whで何ができる?実用性と限界を徹底解説
500Whの容量で使える家電


「300Whだとちょっと不安だけど、1000Whは大きすぎる…」そんな方に選ばれているのが、ポータブル電源の「ど真ん中」、スタンダードモデルと言える500Whクラスです。
【この容量の特徴】
重量は5kg〜7kg前後。ペットボトル2L×3本分くらいの重さなので、駐車場からテントサイトまで手持ちで運ぶのも苦になりません。
定格出力も500W〜800W程度にアップする機種が多く、小型の炊飯器やプロジェクターなど、使える家電の幅が一気に広がります。
【具体的な計算と使用感】
実効容量の目安:約400Wh(500Wh × 0.8)
- 電気毛布(40W・中設定):約10時間
300Whクラスでは厳しかった「一晩中の利用」が、このクラスなら余裕を持ってクリアできます。冬キャンプの最低ラインはこの500Whだと言えるでしょう。 - 車載冷蔵庫(45W):約8〜10時間
日中は車のシガーソケットで冷やし、エンジンを切った夜間はポータブル電源で保冷する、という使い方が完璧にハマります。 - テレビ(60W):約6時間
災害時にニュースを見たり、キャンプでスポーツ観戦をしたりするのにも十分なスタミナがあります。
非常にバランスが良い500Whクラスですが、やはり1000Wを超えるドライヤーや電気ケトルは動きません。
500Whでどこまで快適に過ごせるかは、以下の記事で詳しくシミュレーションしています。
⇒【ポータブル電源】容量500Whでどれくらい使える?目安と計算・比較
1000Whがどれくらい使えるか


ここ数年で一気に主流になってきたのが、この1000Wh(1kWh)クラスです。
キャンパーの間では「迷ったら1000Whを買っておけ」という格言があるほど、圧倒的な安心感と汎用性を誇ります。
【この容量の特徴】
1000Whクラスになると、定格出力も1000W〜1500Wに対応する機種がほとんどになります。
つまり、「家庭にあるコンセント家電の9割が動く」状態になります。
ドライヤーで髪を乾かしたり、ティファールでお湯を沸かしたり、電子レンジでお弁当を温めたり。
「我慢」や「工夫」をせずに、自宅と同じような電化生活を外に持ち出せるのが最大の魅力です。
【機種選びの重要ポイント】
1000Whクラスを選ぶ際は、定格出力が「1200W以上」あるかを必ずチェックしてください。
中には定格1000W止まりの機種もあり、それだと一般的なドライヤー(1200W)や電気ケトル(1250W)が動かない場合があります。
【具体的な計算と使用感】
実効容量の目安:約800Wh(1000Wh × 0.8)
- 電気ケトル(1200W):カップ麺のお湯(3分)なら約13回以上
ガスバーナーを使わずに、安全かつスピーディーにお湯が沸かせます。
強風時やテント内でも安心です。 - ドライヤー(1000W):約45分
家族4人がそれぞれ10分ずつ髪を乾かしても、まだ半分近く電気が残っています。
冬場やお風呂上がりの湯冷め防止に絶大な効果を発揮します。 - 炊飯器(IH式・1000Wクラス):約3〜4回炊飯可能
炊飯時のピーク電力にも耐えられます。
キャンプで「失敗しないご飯」が食べられるのは大きなメリットです。
「迷ったら1000Wh」と言われるほど汎用性が高いクラスです。人気の機種比較や具体的な使用可能回数は、こちらで詳しく解説しています。
⇒1000Whでどれくらい使える?ポータブル電源の容量目安とおすすめ機種
1500Whで動く家電を計算


1500Whクラスは、アウトドア上級者や、特定の高出力家電を長時間使いたい「パワーユーザー」向けの容量帯です。
「1000Whでは少し心許ない、でも2000Whは大きすぎる」というニッチな需要に見事にハマります。
【この容量の特徴】
1000Whクラスとの決定的な違いは、「高出力家電を『長時間』使えるかどうか」です。
例えば、1200WのホットプレートやIH調理器で焼肉をするとします。
1000Wh(実効800Wh)だと、約40分で空になってしまいます。
これでは「お肉がまだ残っているのに火が消えた!」という悲劇が起きますよね。
1500Wh(実効1200Wh)なら、理論上1時間フルパワーで使い続けられます。
火力を調整しながらなら、1時間半〜2時間は食事を楽しめるでしょう。
【具体的な計算と使用感】
実効容量の目安:約1200Wh(1500Wh × 0.8)
- ホットプレート(1200W):約1時間(強火連続)
家族やグループでの焼肉パーティー、お好み焼きなどが最後まで安心して楽しめます。 - ポータブルクーラー(冷房・500W):約2.5時間
真夏の車中泊で、就寝前の数時間を快適に冷やすことができます。
朝までつけっぱなしは厳しいですが、寝付きを良くするには十分です。
このクラスになると、ほとんどの家電が「動くか動かないか」ではなく「何時間動くか」という視点での計算になります。
1500Whの真価については、以下の記事をご覧ください。
⇒【ポータブル電源】容量1500Whで何が使える?家電の目安と活用法
2000Whなどの大容量が必要な人


現時点で、個人が持ち運べるポータブル電源の到達点とも言えるのが、この2000Wh(2kWh)超えのモンスタークラスです。
ここまで来ると、もはや「大きなモバイルバッテリー」ではなく「移動できる家庭用コンセント」と考えた方がしっくりきます。
【この容量の特徴】
2000Whあれば、一般家庭の1日の消費電力(約10kWh前後)の5分の1をカバーできます。
「たった5分の1?」と思うかもしれませんが、照明・冷蔵庫・スマホ・テレビといった「生活に必要な家電」だけに絞れば、丸1日〜2日間の生活を維持できるだけのエネルギー量です。
【具体的な計算と使用感】
実効容量の目安:約1600Wh(2000Wh × 0.8)
- 家庭用大型冷蔵庫(500Lクラス):約24時間〜40時間
停電時に一番困る「冷蔵庫の中身が腐る問題」を解決できます。
夏場は消費電力が増えるため24時間程度、冬場なら40時間近く持つ計算です。 - エアコン(6畳用):約3〜6時間
インバーターエアコンで設定温度を控えめにすれば、真夏の熱帯夜や真冬の寒波を乗り切るための「命綱」になります。 - 電子レンジ&ケトル&ドライヤー:使い放題感覚
「残量が減るから使うのを我慢しよう」というストレスから解放されます。
2000Whクラスは高価ですが、その分「日常がそのまま維持できる」というプライスレスな価値があります。
電気代のシミュレーションや、重さ対策については以下の記事で詳しく解説しています。
⇒【ポータブル電源】容量2000Whはどれくらい使える?家電の目安と電気代
車中泊に必要なバッテリー計算

車中泊でポータブル電源を使う場合、計算の鍵となるのは「季節」と「泊数」です。
【春・秋の車中泊】→ 300Whで十分
気候の良い時期であれば、必要な電力は「スマホ充電」「LEDランタン」「寝る前の動画鑑賞」くらいです。
これらを合計しても1日50Wh〜100Wh程度。300Whのポータブル電源でも2〜3泊の旅が余裕で楽しめます。
【冬の車中泊】→ 500Wh以上が必須
問題は冬です。
車のエンジンを切った車内は、外気温と同じ氷点下まで冷え込みます。
ここで命綱となるのが「電気毛布」です。
計算式:電気毛布(50W) × 8時間(睡眠時間) = 400Wh
これだけで400Whを消費します。
実効容量を考えると、500Whクラスのポータブル電源でようやくギリギリ足りる計算です。
「朝起きたら寒くて電池が切れていた」とならないよう、冬場は余裕を持って700Wh〜1000Whクラスを持っていくのがベテランの選択です。
【夏の車中泊】→ 1000Wh〜無制限
最も過酷なのが夏です。
扇風機(20W)で凌げるなら300WhでもOKですが、近年のような酷暑では命に関わります。
「ポータブルクーラー」を使う場合、消費電力は最低でも200W〜500Wほどかかります。
計算式:クーラー(300W) × 8時間 = 2400Wh
なんと、2000Whクラスの超大容量モデルですら、一晩持つかどうかという厳しい世界になります。
【夏を乗り切るテクニック】
大容量モデルを用意する以外に、「走行充電」を徹底するのも手です。
移動中にシガーソケットから常に満充電にしておき、夜に備える。
あるいは、外部電源が使えるRVパークを利用するなど、電源だけに頼らない工夫が必要です。
キャンプの電源容量シミュレーション

次に、ファミリーキャンプ(1泊2日・4人家族)を想定して、必要な容量を積み上げ計算してみましょう。
「あれもこれも」と持っていくとキリがありませんが、現実的なラインでシミュレーションします。
| 使用する家電 | 消費電力 | 使用時間・回数 | 必要電力量(Wh) |
|---|---|---|---|
| スマホ充電(4台) | – | 夜に1回満充電 | 約60Wh |
| LEDランタン(2個) | 20W | 5時間 | 100Wh |
| 電気毛布(2枚) | 80W | 7時間(弱モード) | 560Wh |
| 電気ケトル | 1200W | 朝のコーヒー4杯分 | 80Wh |
| 合計必要電力量 | 800Wh | ||
合計で800Whが必要という計算になりました。
ここで「800Whのポータブル電源を買えばいいんだ!」と思うのは間違いです。
思い出してください、実効容量の「×0.8」のルールを。
必要量800Wh ÷ 0.8 = 1000Wh
つまり、このプランを実行するためには、カタログスペックで1000Whクラスのポータブル電源が必要になるわけです。
もし予算的に厳しくて500Whクラスしか買えない場合は、「電気毛布を1枚に減らす」「ケトルはやめてガスで沸かす」といった引き算の調整が必要になります。
防災に必要な容量の目安

最後に、地震や台風などの災害に備えるための容量計算です。
防災における容量選びは、「何日間、自力で耐えるか」というフェーズによって正解が変わります。
フェーズ1:発災直後〜1日目(情報収集・連絡)
目安:300Wh〜500Wh
停電直後、最も重要なのは「情報の確保」と「家族との安否確認」です。
スマホの充電と、携帯ラジオ、そして夜間の明かりさえ確保できれば、不安な初動を乗り切れます。
この段階であれば、小型のポータブル電源でも家族全員分のスマホを数日間維持できるため、十分に役立ちます。
フェーズ2:2日目〜3日目(最低限の生活維持)
目安:1000Wh〜1500Wh
復旧まで数日かかる場合、問題になるのが「暑さ・寒さ」と「食事」です。
夏なら扇風機、冬なら電気毛布。
そして温かい食事(電子レンジやケトル)が取れるかどうかで、避難生活のストレスは大きく変わります。
1000Whクラスがあれば、節約しながらこれらの家電を使い、メンタル面での健康を維持することができます。
フェーズ3:長期化(4日以上・在宅避難)
目安:2000Wh + ソーラーパネル
1週間以上の長期停電が予想される場合、バッテリーの中身はすぐに空になります。
ここで重要になるのが「容量」よりも「創エネ(電気をつくる力)」です。
どんなに巨大な2000Whの電源でも、使い切ればただの重い箱です。
しかし、ソーラーパネルがあれば、太陽が出るたびに電気が回復します。
「防災用に完璧を目指したい」という方は、本体の容量を大きくすることだけにこだわらず、「1000Whの本体 + 200Wのソーラーパネル」といったセットでの導入を強くおすすめします。
無限に電気が生み出せる安心感は、何物にも代えがたいものです。
ポータブル電源の容量計算まとめ
長くなりましたが、ポータブル電源の容量計算について、基礎からシーン別の応用まで解説してきました。
最後に改めてポイントを振り返ってみましょう。
カタログの容量は100%使えない。「×0.8」をして実効容量を計算するのが鉄則。
- 稼働時間は「実効容量 ÷ 家電のW数」で簡単に求められる。
- 300Whはスマホ充電用、500Whはソロキャンプ用、1000Whはファミリー&家電用。
- 防災用は容量だけでなく、ソーラーパネルとの組み合わせで真価を発揮する。
「難しそうだな」と思っていた計算も、仕組みがわかれば意外とシンプルですよね。
ポータブル電源は、単なる便利な道具ではありません。
キャンプでは「快適な時間」を、災害時には「家族の安心」を作り出してくれる、現代の必需品とも言えるアイテムです。
ぜひ、今回ご紹介した計算式を使って、あなただけの「必要容量」を算出してみてください。
そして、今回紹介した各容量の詳細記事も参考にしながら、あなたのライフスタイルにぴったりフィットする運命の一台を見つけていただければ嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたの電源選びが、最高の結果になりますように!
